五島美術館 古経楼・冨士見亭   

 
 五島美術館は、国分寺崖線が舌状になっている場所に位置し、敷地内に点在する古経楼と冨士見亭は、崖線の高低差を利用して配置されている茶室です。

古経楼は、明治39(1906)年に田健治郎が建てた「茶寮」で、大正10(1921)年の東宮裕仁の行啓の際に大改修が行われています。その後昭和10(1935)年代初めに五島慶太の所有となり、昭和15(1940)年には西側の一部を取り壊して茶室「松壽庵」が増築されました。
 本工事では、敷地に盛土層が原因と思われる不同沈下が見られたため、まず建物を揚屋し、高圧噴射撹拌工による地盤改良を実施、基礎を新設しました。その後の耐震工事では、既存の雰囲気を残すため、壁補強は可能な限り壁厚を薄くし、細い面皮柱に対して壁際で散りを確保しました。また、壁の少ない中央部分には制震金物を設置し、水平方向への揺れへの対応を図りました。

 
冨士見亭は、昭和32(1957)年頃、晩年足の不自由になった五島慶太の発案により、座礼にも対応できる立礼席の茶室として藤森明豊斎により設計・建築された茶室です。
 
本工事では、小口径鋼管杭による地盤改良を実施し、基礎を新設した後、耐震補強を行いました。冨士見亭は創建以来改築が殆ど無く、錆壁が建築当初のまま現存していました。そのため本耐震工事では、復原が不可能な意匠は可能な限り手を加えないように工事を行いました。
 
その他、経年劣化が進行していたため、屋根の葺き替え及び外部劣化修理を行いました。



古経楼 外観 
古経楼 内部

 
以上、写真3点撮影 小川重雄
 冨士見亭 内部



五島美術館

【所在地】〒158-8510 東京都世田谷区上野毛3-9-25
【ホームページアドレス】  http://www.gotoh-museum.or.jp/